the cheirman of the TEIKOU junior high school's disciplinary committee
俺は元来、年下の女性が好きである。俺の年齢が今14歳であるのでこの発言をするとロリコンになってしまうので決して口にはしない。だが俺はロリコンなどではない。精神年齢が30を軽く超えていると、嫌でも同年齢でも少し年上の先輩でも、俺からしたら全員年下のように見えるのである。若い女の子というのは、少し不器用だが純粋で、実に可愛いらしい。俺的な補足をすると、例えるなら奥ゆかしい大和撫子のような、守ってあげたくなる子がタイプだ。
だからこそ、より一層、男というものが実に可愛げのない我が侭で自己中なクソガキにしか見えないという訳である。
Ready-made phrases cannot define him.
今、正門を出て数百メートル離れた地点で俺の帰宅の邪魔をしてくるクソガキその1、赤司征十郎は、まさにその"男"のテンプレートとしか言いようがない。
「やあ、」
「…やぁ、赤司征十郎君、」
風紀委員の仕事がおおよそ片付いたので、下校時刻までの風紀の仕事を後輩に任せ、職員室で先生と今後の進路や風紀のこと、それから教頭と今後の剣道部の方針について議論を交わしていたら、こんな遅くになってしまった。すっかり暗くなって街灯のついている正門を出たところで待っていたのは、数時間前に手を下したいと思っていた男だった。無視して通り過ぎようとしたら腕をがっちり掴まれて、立ち止まらされているというわけだ。
「今日の夕方、黄瀬に時計をプレゼントしたそうじゃないか」
そして何を言い出すかと身構えていれば、なんとまあ数時間前の校門でのやり取りを目撃していたらしく、黄瀬に時計を渡したことがそんなに気に食わなかったらしい。別に俺が誰に何を渡そうが、関係ないと思うのだが。こいつ一体何処まで俺のことを見ているんだ。そこまで思い至って、ぞわっと鳥肌が立った。ストーカーかこいつは。というより既にストーカーである。いつから、一体どこから俺の風紀の仕事を見ていたというのだ。俺が正門に立ってる間にこいつが現れなかったのは、そういう理由なのか。
普段なら、俺が月曜と金曜日、風紀の仕事をしている時に赤司は部活をしている。部活が終わって下校時刻のギリギリになると、体育系の部活が帰る波がどっと押し寄せる。俺はその間風紀の指導で忙しいので、赤司がやって来たとしても無視。ブラックリストから外されているから、わざわざ彼を構うことなどしない。それを分かっていて、赤司はいつも俺に声をかけてくる。風紀の忙しいときに。その度邪魔だし面倒だから早く帰れやクソガキ的なことを、まあもう少しオブラートに包んだ優しい口調で彼をやり過ごす訳である。今日は部活動が休みになっていたので、赤司が妨害に来るものだと思い最初は警戒していた。だが風紀の仕事中に現れなかった。それはそれで良いのだが、にも関わらず、平和だと、のどかだと感じられなかったのは、あの名前も知らぬ女子生徒のプレゼントを持ち帰らざるをえないせいである。そう。いずれにせよ俺がイライラしていたのは、こいつが原因なのだ。それを和らげてくれた黄瀬には、まあ結果として時計をプレゼントした…ということになるのだろう。本当は時計をどう捨てるかに悩んでいたからなのだが。
「それは君には関係ないよ」
「いや。関係がある。は俺の恋人なんだ。恋人が、何食わぬ顔で他の人にプレゼントをあげているなんて見過ごせるわけないだろう。昨日は熱烈なアピールをしたつもりだったんだけど、足りなかったかな」
俺がいつ、どこで、お前の恋人になるなどと言ったのだ!俺は腸が煮えくり返るのを、少し冷静に感じていた。まだ堪忍袋の緒は切れていない。だからこの時の俺は、まだ大声で怒鳴るような失態を犯す事はしなかった。赤司は嫌な笑顔で、こちらを見つめてくる。俺は怒りを抑えるためにぐっと押し黙る。
俺が思うに、赤司は愉快犯だ。人をおちょくるのが好きな人種に違いない。なぜなら俺がこうして困ったりする、その反応そのものを楽しんでいる節があるからだ。下手に出たら彼の思う壷だ。ここは慎重にならなければ。うっかり往来で知り合いが見ていたら、と考えれば多少の感情の抑制など容易い。俺にだって体裁がある。俺は風紀の仕事以外では怒鳴らないと決めているのだ。
「俺はね、知ってほしいんだよ。に、俺の全部を。なのに、は知ろうとしてくれない」
赤司の言いたいことの半分も理解できない。当然だ、俺は赤司が嫌いである。誰が好きこのんで嫌いなやつの全部を知ってやろうと思うのか。嫌いすぎて、関わりすら持ちたくないというのに。
「だから、俺は決めたよ。今日、俺の名前を風紀委員のブラックリストにもう一度載せてもらった」
「…は?」
目の前の男が、何を言ったのかわからなかった。思わず素で返事を返してしまう。夕焼けに照らされた真っ赤な二対の眼が、こちらを射る。もうとっくに掴まれていた腕は離されていて、逃げようと思えばいくらでも逃げられたというのに。まるで陰を縫われたように、俺はその場から動けなかった。
キチガイだ。キチガイがいる。なぜ以前お金でもみ消したブラックリストの名前をわざわざ再び掲載して、自ら校則違反の危険を侵すような暴挙に出る必要があるのだ。まったくない。部活の主将がそんなことをして、出場停止にでもなったら、部員にどう責任をとるつもりなんだ。俺は風紀の仕事については、「対等」をテーマにしている。ここで出場停止をさせないために赤司を取り締まらない、というようなエコ贔屓をするのは頂けない。しかし学校側からは、期待のエースであるバスケ部を大会に出したいし、出さなければならないということで、監視を緩めるように風紀にお達しが出ている。この事情を明確に知らない生徒達からしたら、バスケ部ばかりなぜ贔屓するのだと風紀が反感を買うのは目に見えている。だからこそ赤司の意図がわからない。というより理解したくない。自意識過剰だと言えばそれまでだが、もしこの男、愉快犯などでなく、俺に本気で惚れているとしたら?だとしたら…。
「君は、俺を追う義務がある。…捕まえてくれよ、風紀委員長さん」
赤司は皮肉って俺を役職名で呼び、上っ面だけ優しそうに微笑むと俺の肩を軽く叩いて、去って行った。俺は立ち尽くすことしかできなかった。そしてこの時、俺は世の中にはお金でどうとでもなることがあるのを知り、赤司にどう頑張っても敵わないと悟りを開きかけるのも無理は無かった。
赤司征十郎という人は、実に可愛げがなく、我が儘で自己中心的な、所謂ラスボスと称される人であった。
- continue? -
2013-06-12
(この男はテンプレートに当てはめるにはいささか大きすぎる)
(陳腐な言葉で彼は定義できやしない)
ここから赤司くんとくんの鬼ごっこが始まります。